「心理療法によって問題の捉え方はいかに変化するか」に関する質的研究:

               解決志向アプローチによる時間制限面接を用いて 


要約

 

クライエントの問題に対する見方や経験の仕方が,心理療法を通じてどのように変化するかを明らかにすることを目的として、9名の協力者が,3回の時間制限試行面接と,その事前事後テストとしてのPAC分析に参加した。事前と事後のPAC分析のプロトコルを,修正版グラウンデッドアプローチ(M-GTA)により概念化した。結果から,問題のイメージの中には個人の持つ力として対処しようとする傾向が現れ,また価値を見出しうるものも含まれる事が分かったが,いずれも失望や不満のもとになりえるため、両価的である事が示された。また解決のイメージから,個人が状況が改善したととらえるのは,現実的な問題がなくなる事よりもむしろ,問題に圧倒されなくなり自分にとって大切なものを見出して主体的に関われていると感じた時であることが示唆された。対処しようとする傾向の両価的な性質に配慮しつつ協働することが,臨床家にとって重要な役割の一つであることが示唆された。