自己受容と対人認知及び対人行動の関連性の検討:囚人のジレンマゲームを用いて

 

要約


本研究の目的は,囚人のジレンマゲーム(以下,PDG)を用いて,自己受容と対人認知及び対人行動の関連性を直接的に検討することである。20名の実験協力者全員に自己受容尺度を実施した。それぞれの友人との2人ペアで20組がPDGに参加した。実験条件は、2×2(友好的場面と好戦的場面、自己受容高群と低群)の4群であり、それぞれ5ペアが割り当てられた。結果は以下のとおりである。1)自己受容高群と低群間で,対人行動に差は見られなかったが、この結果には,PDGを用いたことによる社会的リアリズムの低さが少なからず影響していると考えられた。2)因子分析の結果,認知スタイルに関して、「力強さ」と「信頼性」の2次元が確認された。3)自己受容高群は,好戦的場面においてのみ,他者の異質性を意識するが,相手の内面性を否定することがないように認知することが確認された。4)自己受容低群は,両場面において自己と他者の異質性を意識し、かつ自罰的に捉える認知作用が示された。これは,他者に信頼感を持つことを難しくすると考えられる。

 

キーワード:囚人のジレンマゲーム、自己受容、対人認知スタイル