質的研究から生成された仮説理論の実践に向けて

―「認識と関わりの主体」モデルを例として―

 

ここ数十年のほどの間に,臨床心理学分野における質的研究の隆盛により,多くの仮説が生成されてきた。理論の発展の次の段階として,「社会的実践としての研究」を試みることが重要である。この論文では,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって生成された理論の一つの例として,「認識と関わりの主体」モデルを提示し,ケース・スタディと考察により,検証し修正することを試みた。このモデルは,回数制限のある実験的状況において,20代の非臨床群の協力者から得られたデータにより生成されているため,ここでは心理臨床の専門機関における通常の実践による,2つのケースを検討した。例示した2つのケースは,感情障害を伴うケースと,成人期後期のケースである。その結果,このモデルは2つのケースにおおむね適用可能であり,効果が認められることが示唆された。それと同時に,それぞれの場合に対して調整が望まれることが示された。

 

 キーワード : 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ,

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  質的研究