二重拘束的コミュニケーションが情報処理および情動に与える影響

 

要約 

 

 本研究の目的は、人間の情報処理と情動に対する二重拘束的コミュニケーションの影響を明らかにし、話の内容と口調とに不一致がある音声情報が、どのように知覚され記憶されるかを検証することである。実験デザインは2(口調:肯定的、否定的)×2(話の内容:肯定的、否定的)であった。80名の女子大学生を被験者とし、4つのグループに20人ずつ割り当てられた。被験者はテープに録音した音声を聴かされたのち、その音声情報に関する尺度にいくつか回答し、その音声情報をできるだけ正確に再生するように求められた。結果は以下のとおりである。1)不一致と知覚された音声情報の再生成績は、一致していると知覚された音声情報に比べ、劣っていた。2)口調によって再生エラーが引き起こされていた。3)音声の内容と口調に不一致があるとき、不安の高い被験者は、そうでない被験者に比べ、再生数が少なかった。4)肯定的な内容と否定的な口調の組み合わせは、不一致だと知覚されたが、その逆(否定的な内容と肯定的な口調)は、そうではなかった。