クライエントが「改善が見られない」と報告した事例における

                          問題の見方に関する検討

 

要約

 

本研究の目的は、心理療法によって改善が見られないという訴えがあったケースにおける問題の見方の特徴を明らかにし、クライエントに役立つ面接の有り方を検討することである。心理療法による問題の見方の変化を検討するために、3回の試行面接と、その事前事後テストとしてPAC分析が施行された。本稿では第二セッション後に改善が見られないと報告し面接を終了した1名の調査協力者について検討した。結果から、試行面接前では問題についての考えにとらわれていた状態であったが、第二セッション後には葛藤が和らぎ、その結果気分が少し晴れているが、実験協力者にとって好ましくない側面もあることが示された。これらの変化にはPAC分析も少なからず影響していると考えられた。以上より、心理療法面接においてクライエントが本当に望んでいることに関心を向けること、クライエントのペースに合わせることが重要であることが確認された。